まずは目の前の課題を解決したい。ポーカー カジノeを起業した想い
ポーカー カジノをはじめとする企業の寄付品を、支援団体とマッチングするプラットフォーム「StockBase」。2021年に大学を休学して起業した関芳実さんに、起業と社会課題への想いを聞く
近年、地震や豪雨などの災害が頻繁に起こる日本。過去の大災害を教訓に、企業や自治体では、水や食料などの防災備蓄の必要性が浸透しつつある。
一方、賞味期限が迫った備蓄品を廃棄してしまうと、社会課題であるフードロスにつながりかねない。横浜市に拠点を置く「StockBase(ストックベース)」は、そんな課題を解決するために、期限間近の備蓄品を提供したい企業と、必要とする支援団体をマッチングするプラットフォームを運営する。
代表の関 芳実(せき よしみ)さんは大学在学中、災害備蓄食のロスとフードバンクの支援品不足に気づき、「企業の”もったいない”を誰かの”ありがとう”にする」をコンセプトに、共に学んでいた友人と一緒に会社を起こした。
「社会を変えたいという大きな野望より、目の前の課題を解決したい」——関さんの言葉からは、学生ポーカー カジノ家の等身大の姿と、ビジネスを通じて成長していく様子が浮かび上がる。
寄付の「困りごと」を解決するマッチングサービス
─ まず、関さんが手がける「StockBase」について教えてください。
StockBaseは、物品を寄付したい企業と、それを受け取りたい子ども食堂やフードバンクなどの団体をオンライン上でマッチングするサービスです。
企業から寄付品の内容や数量、搬出希望日などを聞き、運営するサイト上にその情報を掲載。受け取りたい団体は、求める商品があれば欲しい数量だけ選ぶと、無料で受け取れるという仕組みです。
企業から提供される物品は、乾パンやアルファ米、保存水といった備蓄食料のほかに、電池やモバイルバッテリー、未使用のノベルティなどが多いですね。これまで約90社の企業から物品を提供いただき、東京・神奈川を中心に全国の約400団体と繋げることができました。
寄付先への配送料は企業側に負担していただきますが、物品の廃棄にかかる費用よりコストを抑えた上で、社会に貢献できるという価値をもったサービスです。
─ StockBaseならではの特徴は、どのような点にあるのでしょうか。
特に評価をいただいているのは、企業が寄付をする上で生じる負担を低減している点です。企業が直接どこかに寄付をする場合、さまざまな手間や業務コストがかかることがネックになっていました。
たとえば、寄付する量が多いと一つの団体で受け取ってもらうことが難しく、複数の団体とそれぞれ個別に調整をしなければいけません。StockBaseでは、寄付したい企業に「いつまでに、どこから、何を寄付したいのか」を決めてもらうだけで、サイト上で寄付を受け取りたい団体とマッチングできます。
日程調整の手間も大きな負担になっています。企業の担当者は「新しい備蓄品が納品される直前に古いものを出して効率よく入れ替えたい」と考えられるのですが、タイミングよく受け取れる寄付先を探すことは至難の業。そこで私たちは発送タイミングやエリアといった条件の指定を可能にしました。近距離でマッチングして、配送コストをできる限り抑えることもできますし、被災地支援を行っている団体に絞ってマッチングするなど、寄付先の”カスタマイズ”もできます。
─ 企業側の寄付におけるハードルを地道に減らしているのですね。
加えて、寄付先のコンプライアンスチェックをしたり、発送や受け取りの確認をしたりといった業務負担も削減。また、寄付先として登録できるのは私たちの審査を通った団体のみなので、寄付品の転売などのリスクも回避できています。
不要なものでも循環すれば、誰かにとって必要なものになる
─ 関さんは大学在学中に友人と共に「StockBase」を立ち上げましたが、そもそもなぜ企業のポーカー カジノのロスに着目したのですか。
大学3年生の頃、企業で余っている営業用のカレンダーを高齢者施設に運ぶボランティアに参加したのがきっかけでした。高齢者の方は、飲み忘れ防止のために服用している薬を貼り付けて使うなど、カレンダーの需要がすごく高いことを知りました。その時”企業で不要なものでもきちんと循環すれば、誰かにとって必要なものになり得る”と思ったんです。
ちょうどその頃、アントレプレナー系の授業の一環で、学生同士でビジネスモデルを作り、コンテストに出すという課題が出ました。ボランティアで得たアイデアの種をもとに色々考えたのですが、カレンダーは季節性が高いのでビジネスに繋げにくい。他に企業内で不要とされているものがないかを探り、たどり着いたのが賞味期限の迫った災害備蓄食でした。
早速、大量の備蓄食料を保管している都内の企業にヒアリングをしました。するとその企業では10万食以上の備蓄食料を定期的に入れ替えていましたが、賞味期限が迫った食料を社内で配ろうとしても、従業員だけでは捌ききれず、処理に困っていたそうです。
保存水の受け取り手が都内で見つからず、遠方のNPO団体まで送ることにした際には、配送コストだけでもかなりかかったそうで…。「私たちに任せてくれれば、都内の大学の部活動や寮とマッチングするので、配送コストが安く抑えられますよ!」と、近距離でのマッチングを提案したのが、事業の始まりでした。
─ 関さんたちが考えたビジネスモデルは、30歳未満を対象にした「よこはまアイデアチャレンジ」をはじめ、さまざまなビジネスコンテストで高い評価を得ました。事業としてやろうと思えたのはそうした後押しが大きかったのでしょうか。
そうですね。ビジコンを通じて、「第三者から見ても社会的意義がある」と評価されたことで、背中を押してもらった感覚です。ビジコンで賞金を得たことで、事業として活動する場所や資金も確保できましたし、審査員の方々から応援と協力をいただいたのも大きかったです。
ちょうど就職活動の時期だったのですが、企業では備蓄食の行き場がなくて困っているし、フードバンクではコロナ禍で食品が足りなくて困っているという課題を現場で見て、自分たちが解決できそうな方法を見つけたのに、それをしないで就活するのはちょっと違うなって。だから、就職活動を止めて、大学に休学届を出し、ポーカー カジノの道を選びました。
ポーカー カジノする人って、世界や社会を変えたいという大きな野望を持っていることが多いですが、当時の私は全くそんなこともなくて、まずは目の前の課題を解決したいと思ったんです。
─ 就職活動の時期に休学するのは勇気のいる決断だったと思います。
「創業期に注力したいから」という理由が強いのですが、正直なところ、事業を続けながら時間が経ってそのまま卒業したら”新卒の切符”が無くなってしまうなという気持ちもありました。幸い、私の通う大学は無償で休学できる制度があるので、それが活用できましたし、もし失敗したとしても就活できるという安心材料を残しておけるなら、1年チャレンジしてみようと決めました。
結局、ポーカー カジノから1年が経ったときには「就活」の文字は頭にありませんでした。自分たちが想像していた以上に企業のみなさんが反応してくれて。「確かに廃棄備蓄の問題は解決しなきゃいけないね」と共感いただけることが多かったので、このままやり続けてみようと思いました。
受け取り拒否された食料を夜通し配達…失敗も新たな学びに
─ 休学して事業に専念できたとはいえ、学生ポーカー カジノとなると苦労も多かったのではないでしょうか。
当時は社会に出た経験もないので、苦労することばかりでした。会議の資料の作り方や企業へのアポの取り方も何一つ分からなくて…。周りの人に聞いたり調べたりしながら少しずつ学んでいきました。
初めの仕事は、企業から一度に大量に出る備蓄食料をマッチングするものでしたが、オンラインのプラットフォームがまだできておらず、都内の子ども食堂に片っ端から電話をかけて、「こういう食品を寄付できるのですが…」と説明して、リストを作っていたんです。
その時は先着ではなく抽選で寄付先を決めていたので、なが〜いあみだくじを手作りしてくじ引きをしていました。今思えばもっと良いやり方があったと思いますが…(笑)。当時は全てが手探りでしたね。
その仕事が終わってから、次の契約を探すのがすごく難しかったのですが、初めの仕事をきっかけに色々なイベントでピッチする機会をいただき、とにかく私たちの取り組みを伝えまくりました。そこに参加していた企業の方が共感してくれて、少しずつ契約が増えていきました。
─ 創業から3年が経ちましたが、これまでで一番印象的だった出来事はなんですか。
創業2年目の2022年に、10トン近くある冷凍の食料品をマッチングしたのですが、配送先の現場で受け取り拒否されてしまったんです。注文をした団体の代表者と現場の方との連携がうまくできておらず、お届け先の事務所にいた担当者が荷物が届くことを知らなかった。配送業者さんから持ち帰ることができないと連絡がきて、慌てて車を借りて現地に向かい、100箱近いダンボールを手作業で詰め込むことに。冷凍品なので保管することもできないため、そこから受け取ってくれる団体や知人を探しながら、夜通し運転して配り歩くという、大変な経験をしました。
その時に感じたのは、オンラインのプラットフォームではあるものの、物が動くというのはまた一歩違う世界線だということ。その後は、代表者と受け取りの担当者が違う場合は、きちんと連携してもらうのを徹底して、事前に「この日に配送します」というのを何度か連絡するように仕組みを変えました。
─ 想像するだけでも冷や汗が出そうな経験ですね…。前例のないモデルだからこその難しさもありそうです。そうした中でもなぜこれまで続けてこられたのでしょう。
負けず嫌いな性格なので、やり切らないのは信条に反するというのはありました。あと振り返って思うのは、学生だったので周りに何でも聞きやすく、困った時に「助けて」と言いやすかったからだとも思います。また、神奈川県や横浜市のベンチャー支援コミュニティに参加させていただいているのですが、そこにいるポーカー カジノ家や支援者の皆さんの温かさがあったから「孤独」を感じることなく進んで来られたと思っています。
逆に今は、少しずつ成果も出てきているからこそ、「期待に応えなきゃ」というプレッシャーも感じるようになってきました。当初は失敗して当たり前くらいの気持ちでしたが、徐々に失敗することへの恐れや、その状況に対して弱音を吐くこともできないもどかしさを覚えることもあります。
─ 前に進んできたからこその難しさですね。
でも先日ちょっとしたブレイクスルーもあったんです。初めて訪れる地域でピッチをする機会があったのですが、参加者の皆さんが創業当初の思いを目をキラキラ輝かせながら聞いてくださって。「私が求めていたのはこれだったんだ!」と改めて気づいたんです。「StockBaseはこうでなければ」という変な思い込みは捨てて、自分たちがやりたいことにどんどんチャレンジしていけばいいんだと思える機会になりました。
備蓄品のマッチングを通じて、企業と団体がより深く関わる社会に
─ StockBaseは「目の前の課題を解決したい」という小さな思いから始まったビジネスですが、実際はフードロスや貧困など社会課題にも大きく関わっています。活動を始めて、新たに気づいた課題はありますか。
大きく二つあります。一つは、備蓄品の寄付にはマッチングにも大きな課題があるという点でした。例えば、受け入れ体制の整った有名なフードバンクに寄付が集中してしまったり、企業側が一度に寄付する量が多すぎて受け入れきれず廃棄になってしまったりしている。
この点、「寄付を待っているだけでなく、自分たちで注文できる」というStockBaseのサービスが活きる側面でもありますが、寄付する企業と受け入れる団体の両者から希望を聞ける私たちだからこその役割を担っていきたいと感じています。
もう一つは、備蓄品自体が抱える課題です。特に食品の場合、中にはあまり美味しくないものもあったり、「寄付品の備蓄食を食べる=貧困層なのだと感じてしまう」という声もあるなどイメージにも課題があったりする。
これらの課題に対しては、企業側へ「美味しさや品質にもこだわってほしい」と伝えたり、百貨店と共同で備蓄食を活用したフェアを開催してイメージを変えようと尽力したり、美味しい備蓄食の商品開発にも携わっています。
─ 最後に、関さんとStockBaseの今後の展望を教えてください。
今は備蓄品がメインですが、今後はさらに取り扱うカテゴリを広げて、メーカーの売れ残りの在庫やB品なども、社会に役立つ形で循環させていきたいですね。
また、私たちの作ったプラットフォームを生かして、例えばボランティア先をマッチングするような仕組みも作れると思っています。最近は企業でも「ボランティア休暇」が設けられていますから。
備蓄品の寄付というきっかけを通じて、企業と社会的な活動をしている団体がより深くつながる社会を、私たちならこの先の未来で描くことができるのではないかと思っています。
プロフィール/敬称略
※プロフィールは取材当時のものです
- 関 芳実(せき・よしみ)
- 株式会社StockBase 代表取締役
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2000年生まれ、神奈川県横浜市出身。横浜市立大学国際総合科学部 会計学コース卒業。大学在学中の2021年4月株式会社StockBaseを創業。