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第14回 「障害と経済」 松井彰彦 氏

キャリア

2019年12月10日 転載元:リクルートワークス研究所

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多様な依存先を選べる自立環境を作ることが大切

探求領域

経済を「自立」と「依存」という枠組みで捉え直してみる

相互依存的な状況における人間の意思決定の理論(ゲーム理論)を研究してきた中、近年取り組んでいるテーマに「障害と経済」があります。障害関連の問題は、社会に暮らす人々の交流から生まれる社会的な現象であり、ゲーム理論がその問題に有用なアプローチを提供するのではないかと考えています。
取り組みを始めたきっかけは、研究仲間でもある障害者から聞いた興味深い話でした。肢体不自由で車椅子生活をしている彼は、幼い頃から母親の全面的なサポートを受けてきたわけですが、あるとき思ったそうです。「こんな生活を続けていると、母が死んだら僕も死ぬな」と。それで大きな決断をし、大学入学を機に実家を離れて上京、一人暮らしを始めた。彼は、ここから「自立」を感じたというのです。もちろん、生活介助は変わらず必要なんですよ。それを「このことはAさん」「あのことはBさん」というように、支援者の輪を広げていったのです。つまり、母親という太い1本の命綱から、多くの支援者に依存する状態に変化したわけです。支援が"網の目"になれば、仮に1本、2本切れても何とかなる。そして、依存先が増えることによって、一人ひとりに対する依存度は下がる。これらを指して、彼は「自立」だと表現したのです。

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