次世代旅館・ホテル経営者の人生と事業を劇的に変えるプログラム
『じゃらんリサーチセンター(以下、JRC)』は、「変わる地域の、力になります。」を合言葉に、観光に関する研究と、観光・地域振興支援を行う組織です。じゃらん宿泊旅行調査・人気温泉地ランキングなどの各種調査を行うほか、若年層のスノーアクティビティ需要の創出を目的とし、19歳のスキー・スノーボードのリフト券を無料で提供する『雪マジ!19~SNOW MAGIC~」 などのサービスを生み出してきました。旅づくり塾や各種ワークショップ、販売促進計画・メディア戦略・発地向け情報発信などの支援も手掛けています。
この『JRC』が、韓国 カジノ ポーカー、10年以上に渡って投資し続けているのが、「次世代旅館・ホテル経営者育成プログラム(以下、次世代プログラム)」です。2012年に始まった時には観光庁の事業で、『JRC』が実施しました。2014年からは『JRC』が事業を引き継ぎ、それ以来、無償で実施し続けてきました。次世代プログラムは、毎期16名の次世代旅館・ホテル経営者が、半年間に渡り受講するプログラムです。2023年6月時点で、全9期152名の卒業生を輩出しています。
じゃらんリサーチセンター
「次世代旅館・ホテル経営者育成プログラム」では、全国からさまざまな旅館・ホテルの次世代経営者が集結して対話する
変化の鍵を握るのは「Beのリーダーシップ」
次世代プログラムの最大の特徴は、「Beのリーダーシップ(Be型リーダーシップ)」を探求し、経営者としての覚悟を得ることにあります。
Be型リーダーシップとは、「Be=あり方から始める」リーダーシップのことです。自分の信念や想い、組織の存在目的を起点に行動を起こすことです。「Do=やり方から始める」Do型リーダーシップと対比すると理解しやすいでしょう(表1)。ごく簡単に説明すると、Beのリーダーは、環境が変化しても、自分の想いや関係やあり方を出発点にして、周囲を巻き込んでブレずに行動し続けます。経営環境が厳しくなる今日でも、環境変化に順応しながら、継続的に成果を出し続けられるのはBeのリーダーです。
次世代プログラムでは、Beのリーダーシップを身に付けるために、自己の「想い」「ありたい姿」や旅館・ホテルの「ポジティブコア(核となる強み)」「ビジョンとコンセプト」「地域との関わり」など、自己と事業のBeを探求する時間を長く設けています。
一方で、Beの探求だけでなく、経営ノウハウの学びも大切で、このふたつは両輪です。次世代プログラムでは、マーケティング・財務・人財マネジメント・事業計画など、実践的に役立つノウハウを厳選して教えています(図1)。
次世代プログラムのもうひとつの特徴は、「戦友」たちの存在です。全国から集結した次世代経営者たちは異なる地域で事業を行っており、直接のライバルでなく心を開きやすいのです。卒業生も含めた受講生の「戦友」たちが織り成す「実践の共同体」が、Beのリーダーシップを力強く後押しします。
こうしてBeのリーダーシップを探求していくと、受講生の5、6割が感極まって、どこかのタイミングで涙を流します。なぜそんなことが起こるのかといえば、ひとつ目に、次世代プログラムでは、受講生の誰もが安心して自分の悩みを告白できるからです。ふたつ目に、自分の潜在的かつ大事な悩みを自覚できるからです。
旅館・ホテル経営は、多くの場合、巨額投資、景気悪化、自然災害など多様なリスクを抱えています。また現場では、人材不足や長時間労働をはじめ、さまざまな問題が起きています。経営者は、こうした悩みを共有する相手や場が少ないのが現状です。もっといえば、悩みがあることを自覚する機会がそもそも少ないのです。
次世代プログラムは、こうした受講生たちの不足を埋め合わせ、Beのリーダーシップの探求を促して、彼らの人生と事業を変えています。そして、自ら未来を切り開き、イノベーションを実現する次世代経営者を育成しているのです。
次世代プログラムは、戦友たちが何度も対話を重ねる場である
全9期152名の卒業生が日本の各地域で活躍している
次世代プログラムはこれまでに9期開催し、152名の卒業生を輩出しました。彼らは日本中の各地域で活躍しています。そのうちの何名かの声を紹介します。
◎次世代プログラムは、同じ悩みを持つ仲間とともに参加でき、情報提供→プラン作成→宿での実践、と順番に取り組めるようになっています。参加すれば、踏み出せなかった一歩が踏み出せます。ビジョンや夢を持つことができました。旅館の業績と予約率が前年度より約140%アップ。自分はもちろん、旅館やスタッフも成長できるプログラムです。
【2期・田岡 聖司さん(兵庫県 城崎温泉心の宿三國屋・小宿縁)】
城崎温泉心の宿三國屋・小宿縁 Webサイト
◎次世代プログラムは、自社の理念・ビジョンをブラッシュアップし、考え方・使い方を学べる最高の場所だと約束できます。当ホテルでは、リーダークラスのスタッフが心から理念・ビジョンに共感してくれており、コロナ禍もひとりも欠けませんでした。ビジョンに沿った戦略で高付加価値を実現し、好循環が発生しています。
【6期・渡邊 大介さん(山梨県 富士山の見える温泉旅館 大池ホテル)】
富士山の見える温泉旅館 大池ホテル Webサイト
◎受講前、私の財務知識はほぼゼロでした。勤務時間が長く従業員は疲弊しており、研修もしていませんでした。半年学び、私は銀行担当者と一対一で話せるように。食事メニュー変更で従業員の勤務時間削減に成功。地域を学ぶ研修もスタート。『じゃらん』の口コミは4.4→4.8に。さらに、2023年度「じゃらん編集長が選ぶ ベストプランニング大賞」も受賞できました。地域、お客様、スタッフから愛される宿になります。
【8期・北里 晃子さん(熊本県 黒川温泉 和風旅館美里)】
黒川温泉 和風旅館美里 Webサイト
彼ら受講生たちの大きな特徴は、旅館・ホテルを継ぐ運命にあり、業界に長く留まることです。だから、彼らの変化は業界全体にも波及します。事実、初期卒業生は業界団体の主要ポジションで活躍しています。今後も周囲を牽引するリーダーが次々に生まれるでしょう。次世代プログラムから生まれた150人以上のBe型リーダーは、『JRC』にとって大きな社会資本です。
後編記事では、なぜ、次世代旅館・ホテル経営者を育成することが観光業界と地域の未来につながるのかを事例を交えて紹介します。