リクルート HR統括編集長 藤井薫とSUUMO編集長 池本洋一が語る、ニューノーマル時代の「職」と「住」。その先に広がる生き方とは。
新型コロナウイルス感染症の拡大は、私たちの生活を一変させた。「ニューノーマル」という言葉のとおり、世界中の人々がコロナに対応した新しい社会の中で、新しい生活様式を模索している。
リクルートでは、例年おこなっているトレンド予測の中で、2020年の住宅領域のトレンドに「職住融合」を挙げていた。この予測は、東京五輪の開催に向けたテレワークの推進を前提にしたものだったが、コロナ禍により、このトレンドは急速に現実のものとなってきている。
この職住融合時代に、働き方・住まいはどう変わっていくのか。リクルートキャリアHR統括編集長 藤井薫と、リクルート住まいカンパニーSUUMO編集長 池本洋一のポーカー の ルールから、前後編にわたってひもといていく。
職住融合の兆しはコロナ前から
――リクルートでは、2020年の住宅領域のトレンド予測に「職住融合」を挙げていました。発表されたのは新型コロナウイルスの感染拡大前でしたが、職住融合の兆しはどのようなところにあったのでしょうか。
池本 我々は、住まいを中心とした暮らし領域を広く深く探究し続けています。例えば、リノベーション物件の間取り。既存の間取りを生活者の欲しい形にリデザインするリノベーションには、事業者の意図ではなく、生活者の意思がそのまま反映されやすい。住まいのトレンドを考えるには良い研究材料です。そのリノベーションの事例の中には、ここ2〜3年で「ワークスペース」をつくるものが増えてきていました。
よくあるのは、リビングの近くに音は遮断しつつ光は入るよう工夫をした、小部屋をつくる事例。家族の気配を感じられるけど、集中できるよう適度に遮断されている。カーテンなどをつければ、寝室としてもギリギリ使えるような広さのものです。
納戸をワークスペースに変更する事例もありました。「ウォーク・イン・クローゼット」ならぬ「ワーク・イン・クローゼット」です(笑)。ビジネスパーソンが仕事に使うだけでなく、子どもたちの学習などにも活用する意図でつくられていました。
――数年前から、「自宅で働くこと」を前提に家を考える生活者がいたということですね。